医療法人 羅寿久会 浅木病院|福岡県遠賀郡遠賀町|神経内科|リハビリテーション科|内科|消化器科|循環器科

 

論文・学会・研修報告

 

論文・学会・研修報告

論文・学会・研修報告
2
 
回復期リハビリテーション病棟における脳卒中の在院日数を45日に短縮
2018-02-05
 
「リハビリテーション・プログラムの工夫により、回復期リハビリテーション病棟における脳卒中の在院日数を45日に短縮」
 
 高齢化社会を迎え、リハビリテーション(以下、リハビリ)を要する患者が急増している。できるだけ多くの患者を迅速に受け入れるためには、回復期リハビリ病棟の在院日数を短縮する必要があり、そのためにはリハビリ・プログラムも工夫しなければならない。
 入院時の説明で、脳卒中のリハビリは2ヶ月で完了できること、その後はできるだけ自宅へ退院し、次の患者にベッドを譲ってほしいと説明した。プログラム:理学療法では麻痺肢の治療ではなく、非麻痺肢の強化に主眼を置き、1日400〜600回の起立-着席運動を行った。これは集団訓練を行うと容易であった。作業療法では、麻痺手の機能回復とともに、移乗、車いす駆動などで下肢の強化に力点を置いた。ADLの回復は下肢強化で自動的に可能になる。言語摂食療法では言語訓練に限定し、嚥下訓練は行わなかった。エビデンスの得られた嚥下訓練はほとんどないためである。時間にして1日4時間理学療法/作業療法の訓練室に留まるようにした。
 われわれの回復期病棟で治療した脳卒中実験例(254例)と、全国調査(9,041例)との成績を比較した。入院時FIMには差がなかったが、退院路FIMは実験例94.6点、全国調査88.3点、平均在院日数は実験例45.0日、全国調査81.3日、自宅退院率は実験例80.3%、全国調査66.3%で、それぞれ差がみられた。
 非麻痺側下肢の筋力を強化し、運動量を増やすプログラムにより、在院日数を短縮することができた。
(日本医療マネジメント学会雑誌 V0l.18,No3,2017)
 
トイレで排泄させる為に有用だった簡易型リフト『ささえ手』
2017-10-20
トイレで排泄させる為に有用だった簡易型リフト 『ささえ手』
~在宅療養中の多系統萎縮症に対する導入経験~
 
 多介助を要する患者をトイレで排泄させる場合、移乗や下衣操作の介護負担は大きい。一方で、介護用リフトは操作が煩雑で時間がかかるなどの理由で導入が進まない。
 今回、手動式で吊り具が不要な簡易型リフト「ささえ手」を導入することにより、在宅で容易にトイレを使用できるようになった多系統萎縮症の重症例を経験した。症例は50歳代女性。発症から6年経過した時点で起立や移乗が不能となり、要介護度5。1人の介助者では移乗させるのは困難になったが、「ポータブルトイレを使いたくない」という患者の思いを汲み取りリフトの導入を検討。床走行式リフトでは患者、介護者双方にとって実用性の観点から問題があり受け入れ困難だったが、「ささえ手」はこの目的にとって有用だった。
 「ささえ手」の最大の特徴は、吊り具を使用せずに座位から半座位にできることである。臀部が垂直位になるために下衣操作も容易となり、トイレへの誘導にとって合理的で実用性が高い。障害が重度である患者にトイレを利用する際には、考慮すべき選択肢となり得るだろう。
(第5回 日本難病医療ネットワーク学会 ポスター発表)
 
デンマーク高齢者ケア 現地視察研修
2017-07-10
デンマーク高齢者ケア 現地視察研修
                     作業療法士 新藤和廣
ケアマネジャー  山下由美子
 
【はじめに】
 今回福祉フォーラム・ジャパンのデンマーク高齢者ケア現地視察研修(2017年3月12日~18日)に参加しました。この研修は短期集中滞在型で高齢者施策の概要やケアスタッフ養成学校訪問、ヘルパー同行訪問や補助器具センターの訪問などでした。その内容を簡単ではございますが報告します。
 
「世界一幸せな国デンマーク」
医療・介護・年金・教育が無料で、何よりも、人生の最期までを過ごす場所が保障されています。かつてのデンマークは高齢化の問題を抱え、1979年の段階で福祉改革に取り組み、「福祉の質を落とすことなく、お金をかけずに、よりよい福祉を実施する方法はないか。」いう題提起から「高齢者三原則」というデンマーク福祉の考え方が打ち出されました。日本とデンマークでは、文化も考え方も違うかも知れませんが、歳を重ねて介護が必要になることや認知症になることは日本と同じで、この考え方は日本の暮らしにも大切なことだと思いました。
 デンマークでは18歳になったら独立し、夫婦または一人暮らしになるのは当たり前のことで、市民の健康管理や介護サービスの派遣は、市が責任をもっておこなっています。また、訪問サービス中心の支援は、無駄のない動きで、必要な事のみをおこなっています。介護が必要な人は「自分でできることはおこなう努力」、介護する人も「本人に任せる、待つ努力」が必要だと思いました。
 
【在宅ケア制度】
デンマークでは24時間365日在宅でサービスを受ける事が出来ます。また、利用制限はなく必要な時に必要な分だけ利用できるようなシステムになっています。ヘルパーは1回の訪問で5-15分と短いですが必要に応じて一日に何回も訪問します。実際に5件ヘルパーに同行しましたが全員一人暮らしの方でした。しかし、家の中はきれいに整頓されていてヘルパーの方は利用者の方と楽しそうに会話しながら手際よく働かれていたのが印象的でした。また、リフトも当たり前のように使われていてその操作もスムーズで驚きました。
 
【補助器具センター】
補助具のレンタルは全て無料です。センターでは補助器具は利用者の為だけでなくヘルパーの労働環境にも着目してレンタルできるものを増やしているとの事でした。日本でも福祉用具のレンタルはありますがデンマークではさらにヘルパーの健康面にも着目して新しいものを導入していることにとても驚きました。
 
【最後に】
デンマークで訪問介護に同行した時、一人寂しそうにも感じる部屋に、古い写真や絵が並べられていて、その方の歴史がありました。そして、その暮らしは今も続いています。日本の介護を考える時、最期までの人生をじっと待つのか、何かをして迎えるのかには大きな違いがあります。状況が変わると、施設へ入ることを考えることもありますが、介護サービスを利用すれば、家に居て、自分らしい暮らしが続けられることもあります。また、普段から「何かあったらどうしよう」では無くて、「何かあるからこそ、その時はどうしたいか。」自分の意思を伝えておくことも大切だと思いました。デンマークでの出会いに感謝し、今後に活かしていきたいと思います。
 
不安定性腰痛圧迫骨折に対してレッグプレスの使用した研究
2017-06-19
 不安定性腰痛圧迫骨折に対する垂直型レッグプレスの使用経験と表面筋電図を用いた検討
 
《対象・方法》
 症例は70歳代の女性で、既往に脳梗塞左片麻痺がありましたがシルバーカーを使って歩行は自立していました。某日、第1腰椎圧迫骨折を受傷し当院に入院となり、骨折した椎体の不安定性を認め、座っていられないほど痛みが強い状態でした。しかし寝ている状態では痛みが少ないため、入院翌日より仰向けで行うレッグプレス(PVLP156X:Body-solid社)を開始し、痛みがなくなり椎体が安定するまでの8週間、1日400回を週7日実施しました。
 
《結果》
 レッグプレスを8週間行った結果、骨折前の状態(シルバーカー歩行自立)に戻ることができました。
 表面筋電図の結果は、起立動作と比較してレグプレスがより高い筋活動を示しました。
 
《まとめ》
 8週間起きることができなかったにも関わらずレッグプレスを用いた運動で骨折前の状態を維持できた症例を経験しました。当院のレッグプレスは仰向けで運動できるため、痛みなどで起き上がれない患者様に対して効果的な運動になる可能性があると考えます。
 
(第52回日本理学療法学術大会2017でポスター発表)
 
 
 
高齢重症肺炎患者に対する起立-着席運動の早期介入効果
2017-06-13
 高年重症肺炎患者に対する起立-着席運動の早期介入効果
 
【方法・対象】 
  • 当院では負荷量を調節しながら肺炎発症早期より起立-着席運動を行っています。
  • 対象は過去5年間で当院に自宅より直接入院し、発症前に屋内歩行が自立していた方で中等度以上の肺炎であった31例です。
    (男性23例,女性8例,平均年齢87.7±6.3歳)
 
 
【結果・結論】
  •  リハビリは入院後平均1.9日より開始し、平均2.1日より起立-着席運動を行いました。
    (平均起立回数290回/日)
  • その結果、90%の人が発症前の身体の動きを維持することができ、94%の人が自宅に帰ることができました。
  • 起立-着席運動は肺炎発症早期に行うリハビリとして効果があると考えられました。
(第52回日本理学療法学術大会にてポスター発表)
 
 
重症パーキンソン病患者 8例に対する 起立-着席運動
2016-12-15

重症パーキンソン病患者 8例に対する 起立-着席運動

~廃用による機能障害に対するアプローチ~

 
<対象・方法>
  •   歩行、移乗など日常生活全般に介助が必要なパーキンソン病患者8症例
    (平均年齢:68歳 平均罹病期間:14年)
  • 起立-着席運動を中心としたリハビリを行い、4週後に訓練による効果を調査しました。

 

<結果> 

  • 起立-着席運動は一日平均280回出来ました。
  • 下肢筋力が全例で改善しました。(図1)
  • 歩行、移乗の能力が改善しました。(図23
  • 日常生活動作での介助量が軽減しました。(図4

 

<まとめ>

  • 起立- 着席運動は歩行よりも筋活動が多く、危険が少なく、
    簡単に行える運動として知られています。
  • 今回の検討では、重症のパーキンソン病患者に対する運動療法として

    起立-着席運動は実施しやすく、かつ効果が大きいと考えられます。 

 

 

(九州理学療法士・作業療法士合同学会2016で発表)

 

 
脳卒中重度片麻痺の歩行回復に関する研究
2016-12-14
脳卒中重度片麻痺(Brunnstrom stageⅡ以下)の歩行回復に関する研究
 
<対象>
 Br.stageⅡ以下の初発脳卒中重度片麻痺患者53例
 歩行自立・監視群(16例)と歩行介助・不能群(37例)の2群を比較検討
 
<結果>
 脳卒中重度片麻痺患者の歩行に影響を与える因子として・・・
  1. 年齢(若齢>高齢)
  2. 麻痺側(右>左)
  3. 深部感覚障害(なし>あり)
  4. 半側空間無視(なし>あり)
  5. 非麻痺側下肢筋力(強い>弱い)
     ↓↓↓↓↓↓↓
 
 1.2.は不可逆的であり介入不可能
 3.4.は未だ確立した治療法がないのが現状
 5.は科学的根拠があり、介入しやすい
 
<まとめ>
 今回の研究から重度片麻痺患者における歩行能力の改善には非麻痺側下肢筋力が重要で
 入院早期から積極的にアプローチを行う必要があると考えます。
 重度片麻痺患者に対して起立-着席運動は歩行訓練と比較して運動が行いやすく、筋活動が
 大きいことから歩行回復に効果的であることが示唆されます。
 
(九州理学療法士・作業療法士合同学会2016で発表)
 
 
左前頭葉梗塞による右上肢の強制把握を呈した一症例に対する ADL 上の工夫
2016-11-30
 【はじめに】

左前頭葉梗塞による右上肢の強制把握を認めた症例を経験した。これまで、強制把握が ADL に及ぼす影響や改善 への試みに関する報告は少ない。今回、ADL 場面で更衣、歩行(伝い歩き)、トイレ動作の両手を使用する動作に おいて、強制把握が障害となった為、それに対する工夫点や改善効果について報告する。

 

【症例】
80 歳代、女性。右利き。独歩で ADL も自立しており、物忘れなどもなかった。X 年左前頭葉に脳梗塞発症。26 病日目に当院転院。右片麻痺を認め、Br.Stage(上肢-手指-下肢)II-III-IIであった。麻痺の改善に伴い、37 病日目頃より右手に強制把握が出現。手を開放するように命じても開放することができないほど、把握反射の程 度は強度であった。なお、本報告を行うにあたり、本人に口頭および書面にて同意を得ている。

 

 

【強制把握と ADL の関係】

山鳥はベッド柵や布団の端などをいつもつかんでいる、一旦つかんだものは自分で はずすことが出来ず、反対の手を使って指を一本一本引きはがすことがあると述べ ている。症例も強制把握の出現により、握ってしまった右手を左手で引きはがす動 作が認められ、本人からは「また握ってしまった」「離せない」等の発言があった。 更衣動作では、右上肢の袖を通す途中で強制的に衣服を把握してしまい、通すこと ができず、時間や介助を要す状態であった。歩行(伝い歩き)では、左手のみで手す りを使用して開始するも、右手が目の前の手すりを強制的に把握してしまい、持ち替 えることが困難となり進むことができなかった。トイレ動作では、両手で下衣操作を 行おうとし、右手が下衣をつかんでしまい、下衣操作が困難であった。また、歩行、 トイレ動作時に次の動作に進むため、左手右手を一本一本引きはがそうとし、立位バ ランスが不安定となり、転倒の危険性があった。

 

【強制把握に対しての工夫】

 更衣・歩行(伝い歩き)では、強制把握が出現する右手にタオルを把握させて実施した。更衣ではタオル把握さ せていることにより、途中で衣服を把握することなく実施でき、着衣時間が短縮した(3 分 10 秒から 1 分 15 秒 に改善)。歩行(伝い歩き)では左手で手すりを把持し、止まることなく監視で可能となった。トイレ動作は強 制把握を利用し、右手で手すりを把持することにより、立位バランスが安定し、左手での下衣操作が監視で可能 となった。更衣・歩行(伝い歩き)・トイレ動作において介助量の軽減を図ることができた。

 

【考察】 強制把握は両手を使用する動作において障害となった。更衣・歩行(伝い歩き)では、右手にタオルを持たせ、 強制把握を制限することで、動作をスムーズにすることができた。トイレ動作では、右手で手すりを握らせ、強 制把握を利用することで、介助量の軽減につながった。ADL 場面に応じて、強制把握の制限と利用を検討する必 要があると考える。 

 

(第50回 日本作業療法学会2016 口述発表)

 
前屈姿勢異常を示すパーキンソン病患者の姿勢改善を目指した運動療法の試み
2016-01-22
肋木を使用した頸部体幹伸展反復起立運動の
有用性

 

<対象>

前屈姿勢(首下がり3例、腰曲がり1例)を示す

パーキンソン病患者4症例

平均年齢: 73 歳

 

<方法>

肋木を使用し首と背筋を伸ばしながら立ち上がる

運動を平均145回/日行いました。

 

<結果>

筋電図測定により首、背筋を伸ばす筋肉が

多く働いていることがわかりました。

 

運動により

3例の自分で首を上げる角度 平均 38度 

1例の自分で背筋を伸ばす角度    25度

改善が見られ、姿勢が良くなりました。

 

姿勢が改善し、歩行、飲水がしやすくなりました。

 

肋木起立運動は首、背中をおこす筋肉が働く運動

で姿勢改善が期待できます。

 

(九州理学療法士・作業療法士合同学会2015 ポスター発表)

発表ポスター
 
起立‐着席訓練方法の工夫により座位保持不能から1ヵ月で歩行自立した片麻痺患者
2016-01-20
 

座位保持不能から1ヵ月で歩行自立

<対象>

初発脳卒中片麻痺患者6症例

平均年齢:66

 

<リハビリ内容>

入院時より可能な限り自主・自己での

起立‐着席訓練を1350~600回行いました。

 

<治療結果>

                (入院時)  (退院時)

・筋力は、健側の膝を伸ばす力 :平均47%→83

     麻痺側の膝を伸ばす力:平均10%→58

*健常者の筋力を100%とした割合(%)

 

・日常生活動作を評価するBarthel Index100点満点)

で平均26(入院時)94(退院時)に改善しました。

  歩行は6症例とも自立し、全例で自宅退院できました。

 

早期からの起立‐着席訓練による強い筋活動下で効率よく

下肢筋力増強が行え、1ヵ月という短い期間での歩行の

自立につながりました。

 

(九州理学療法士・作業療法士合同学会2015でポスター発表)

発表ポスター
2
<<医療法人 羅寿久会 浅木病院>> 〒811-4312 福岡県遠賀郡遠賀町浅木2丁目30番1号 TEL:093-293-7211 FAX:093-293-1345