医療法人 羅寿久会 浅木病院|福岡県遠賀郡遠賀町|神経内科|リハビリテーション科|内科|消化器科|循環器科

 

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学会・論文・研修報告

学会・論文・研修報告
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起立-着席運動でADL改善が得られた,結節性多発動脈炎に伴う多発性単神経炎
2019-09-13
起立-着席運動でADL改善が得られた,結節性多発動脈炎に伴う多発性単神経炎の一例
  永冨太一(PT),新藤亜美(OT),三好安(MD),三好正堂(MD)
 
結節性多発動脈炎(以下PN)に伴う多発性単神経炎は軸索障害であり,一般的に難治性である.この神経炎に対するリハビリテーションにおいては,いつから何を行うのか,どの程度の運動が過負荷になるのか等不明な点が多く,その報告も少ない.
今回、某日急に四肢麻痺になり,PNと診断され,ステロイド・パルス療法,次いでプレドニゾロン投与,筋力は全身的に低下し,四肢末梢の感覚脱失を呈した症例に対し,起立-着席運動(以下,起立運動)を行い,順調に回復した症例を経験した.
本症例は重度の神経障害・筋障害を伴っているにもかかわらず,起立運動を無理なく実行できた.これは起立運動が低負荷・高頻度であるため,患者への負担も少なく,過用症候群が懸念される疾患においても効果的である.また,十分な筋活動を期待でき,ADLの改善・廃用性筋力低下の予防につながることが示唆される.
(第56回日本リハビリテーション医学会学術集会JARM2019 ポスター発表)
 
更衣動作の自立に難渋した視覚性運動失調の一例
2019-09-13
更衣動作の自立に難渋した視覚性運動失調の一例
 
坪浦ななえ(OT),三好安(Dr.) ,由村健夫(Dr.),新藤和廣(OT),永冨太一(PT),中川原晴美(ST)
 
【要旨】
視覚性運動失調とは視覚性到達運動の目標から到達位置がずれてしまう徴候であり, 注視下で病巣と反対側上肢が把握不能だと最重症とされる.この障害は上肢の到達障害と報告されてきたが下肢の報告もある.本症例は入院時, 注視した中心視野およびその周辺視野に置いた標的を右上下肢で触れるという動作を評価したがいずれも不可能であり, 特に周辺視野では大きく的を外した.退院時にも同様の評価を行い, 中心視野での到達は可能になったが, 周辺視野では明らかな改善なく不可能のままだった.
 
これまでに視覚性運動失調患者のADLに関連した報告はなく, 本症例では上衣よりも下衣に難渋した.通常ズボンを使用した単純な反復練習では効果は出にくく,試行錯誤の段階では閉眼更衣・透明なズボン・縦ラインのズボン・横ラインのズボンを使用した.その結果,足を通すには目印を中心視野に捉える必要があり,足を通す方向を示す縦ラインが有効であることが示唆された.
 
(第56回日本リハビリテーション医学会学術集会JARM2019でポスター発表)
 
脳卒中回復期では入院時の起立動作能力によって退院時歩行能力の予後予測は可能か
2019-01-24
脳卒中回復期では入院時の起立動作能力によって退院時歩行能力の予後予測は可能か?
医療法人羅寿久会浅木病院 下山 洸平(PT) 三好 安(MD)
【はじめに】
脳卒中患者の歩行獲得に関与する因子として,年齢や運動麻痺,体幹機能,バランス能力,高次脳機能障害,認知機能面など多くの因子が影響するとされている.当院回復期リハビリテーション病棟(以下,回復期病棟)では,脳卒中患者に対する治療として「起立-着席運動」を主に行っており,400~600回/日実施している.起立動作も歩行動作と同様に,麻痺の程度や体幹機能,半側空間無視などの高次機能障害など様々な因子の影響を受けることが考えられる.そこで,回復期病棟入院時の起立動作能力と,退院時の歩行能力の関係を後方視的に調査し,入院時の起立動作能力が歩行獲得の予後予測に有用であるかを検討した.
 
【対象と方法】
対象は,2014年1月から2016年12月までに急性期病院で治療後に当院の回復期病棟へ転院し,発症前の歩行能力がFIMで6点以上だった初発脳卒中片麻痺患者212名.その内訳は,男性130名,女性82名.平均年齢69.1±12.5歳.脳梗塞127名,脳出血85名.右麻痺104名,左麻痺108名.退院時歩行能力をFIMで6点以上を自立群,5点以下を監視介助群とする2群に分類し,以下の入院時データとの関連性を比較検討した.調査項目は年齢,下肢Brunnstrom Stage(以下,Brs),入院前日数,健側下肢筋力,および今回着目した起立動作能力の計5項目とした.なお,入院前日数は発症後当院回復期病棟に入院するまでの日数を,1~14日,15~30日,30日以上の3群に分類した.健側下肢筋力は,Isoforce GT-330(OG技研)にて健側膝関節伸展筋力の測定を行い,当院の年齢別健常者下肢筋力平均値を使用して%に変換した.起立動作能力は,40㎝高の台から起立動作を行い,手すり支持にて安全に実施できるものを起立自立群,監視を要するものを起立監視群,介助を要すものと実施困難であったものを起立介助群とした.これらの5項目に対して2群間比較(対応のないt検定,Mann-Whitney検定)を行った.目的変数を退院時の歩行自立の有無とし,2群間比較にて有意差を認めた項目を説明変数として多重ロジステック回帰分析を行い,変数選択(変数増加法;尤度比)により関連性を示すか検討した.統計解析にはSPSS 11.5J for Windowsを使用し,有意水準は1%未満とした.
 
【結果】
対象212名の退院時歩行能力は,自立群153名(72%),監視介助群は59名(28%)であった.2群間比較の結果,年齢,下肢Brs,入院前日数,健側下肢筋力,起立動作能力の5項目全てで有意差を認めた.多重ロジステック回帰分析の結果,退院時の歩行の自立の有無に影響する因子として,年齢,下肢Brs,起立動作能力が選択された(モデルχ²検定でp<0.01).年齢のオッズ比1.121(95%信頼区間1.065~1.180),下肢Brsのオッズ比0.646 (95%信頼区間0.470~0.887),起立動作能力のオッズ比3.911 (95%信頼区間2.160~7.081)だった.Hosmer-Lemeshow検定結果はp=0.871で,判別適中率は86.8%だった.以上の結果から,退院時歩行の関係性が強い項目として起立動作能力,下肢Brs,年齢の順となった.(表1)
 
【まとめ】
本研究では,多くの先行文献で歩行能力の予後予測因子として提示されてきた年齢や下肢Brsよりも,起立動作能力の方が退院時の歩行能力に対して強い関係性が示された。このことから入院時の起立動作能力が今後の予後予測の因子の一つとして提示できる可能性が示唆された。
(九州理学療法士・作業療法士合同学会2018in沖縄 口述発表)
 
介護用リフトの導入が自宅退院を可能にした重症脳卒中の一例
2018-09-22
介護用リフトの導入が自宅退院を可能にした重症脳卒中の一例
医療法人羅寿久会 浅木病院 小川僚(OT)甲斐玲(PT)新藤和廣(OT)三好安(MD)
【はじめに】
介護用リフトが介護負担や腰痛を軽減することは知られているものの,操作が煩雑で時間を要するなどの理由からわが国での普及率は低い.過去5年間で当院退院時に移乗能力がFIMで1点であった患者39名の転帰先およびリフトの導入率を調査したところ約4割の方が自宅退院し、約9割がリフト導入していた。(図1)
今回,高齢の妻が唯一の介護者であったにも関わらず,自宅退院へと繋げることができた脳卒中による重度片麻痺の症例を経験した.この自宅退院を実現させた要因として介護用リフトの活用があげられ,その導入から自宅退院までの経過と,在宅生活の追跡調査を報告する.
【症例】
80歳代,男性.右利き.身長170㎝,体重55kg.某日,右中大脳動脈領域に広範な脳梗塞発症.19病日(入院1日目)にリハビリ目的で当院入院.左完全麻痺,左半側空間無視,意識障害(Japan Coma Scale:Ⅱ-10)を認め,指示理解も困難であった.ADLはFIM:23点と全介助状態.80歳代の妻と二人暮らしで,妻は小柄(身長145㎝)なうえに肩痛,腰痛もあった.
【入院経過】
 入院時よりその重症度から多介助の状態で終わる可能性が高いと考えられたが,妻は「なんとか自宅に連れて帰ってあげたい」との強い希望があった.妻の体力では実用的な移乗動作はできないことが予見されたために,入院当初から介護用リフトの導入を視野に入れ,実際にリフトで移乗させている現場を見学してもらうように努めた.最初は,「手順が多く,私には難しい.」と言っていたが,入院14病日目より移乗時に協力するようになり,ベッド柵の取り外しや電動ベッド操作などを自主的に行うようになった.この頃から,「ずっと見てきたから手順を覚えてきた.手助けをしてもらえば出来るかもしれない.」と自信がついてきた.入院28病日目よりすべての過程を妻に行ってもらい,出来ていないところを助言,援助をする形で介入した.1回目は吊り具の敷き込み,ベッドから車椅子までの移動を含め9分50秒かかったが,徐々に時間は短縮し援助する回数も減っていった.退院時には援助することなく4分30秒で可能となり,「慣れると大変と感じない.」とリフトに対する印象が変わっていた.入院83病日目に希望であった自宅へ退院した.
【追跡調査】
1年後に追跡調査を行い,リフト移乗の時間は3分20秒と退院時よりさらに短縮していた.Zarit介護負担感尺度(短縮版)は退院時21点から10点と軽減していた.本症例の意識状態も改善し,簡単な会話が行えたり笑顔も見られたりするようになっていた.また,妻は気持ちに余裕ができたと趣味活動を再開していた.
【考察】
植松らは高齢脳卒中患者が自宅退院するための条件として,「移乗」と「家族構成人数」が大きく関与すると述べている.本症例は移乗動作に多介助を要し,高齢の妻との二人暮らしであったために在宅復帰は困難な状態だったといえる.わが国の高齢化社会の進行に伴い,今後老々介護で在宅生活を送らなければならない状況はますます増えていくと考えられ,介護用リフトを活用する意義が高まるのではないかと思われる.リフトの導入時には未経験のために不安や大変さを訴えることも予想されるが,本症例のごとく家族が操作方法を習得すれば身体的な負担が軽減され,気持ちにも余裕をもった在宅生活を送ることができることが示唆された.
(第52回 日本作業療法学会2018 口述発表)
 
 
感覚障害・不随意運動に対する調理動作の工夫(自作フィンガーガード)
2018-09-22
自作のフィンガーガードにより調理動作が可能となった両手指に感覚障害・アテトーゼ様不随意運動を呈した一例
医療法人羅寿久会 浅木病院 稗田夏実(OT)松本千歩(PT)新藤和廣(OT)三好安(MD) 
【はじめに】
視神経脊髄炎(Neuromyelitis optica:以下NMO)(C₁-C₅)により四肢の麻痺ならびに重度感覚障害,両手指のアテトーゼ様不随意運動を呈した症例を担当した.ADLは徐々に改善し,Barthel index(以下:BI)は100点となり身の回りの動作は自立したが, 調理動作だけは両手指の深部感覚障害,アテトーゼ様不随意運動のために難渋した.本症例に適した自助具を検討し自作することにより調理動作が可能となったため,その工夫点を報告する.
【症例】
60歳代,女性.右利き.夫と二人暮らしで主婦.某日,NMO発症.リハビリ目的にて当院入院.入院時,四肢麻痺や重度感覚障害(右<左)を認め,ADLはBI 5点と全介助状態だった.また,両手指にはアテトーゼ様不随意運動を認めた.運動能力・表在感覚は次第に改善し,BI 100点になったが,両手指の深部感覚障害,不随意運動は残存し,簡易上肢機能検査(STEF)は右:88点,左:78点と左手の巧緻性低下が目立った.握力は,右:17.7㎏左:13.5㎏.退院に向けて本人の希望に添って調理訓練を実施した.なお,本報告を行うにあたり,症例より口頭および書面にて同意を得た.
【経過】
調理動作は「切る」以外の動作は両手で安全に行えた.しかし,切る動作だけは両手指に認めた深部感覚障害,アテトーゼ様不随意運動により上手く行えなかった.具体的には,左手は食材を固定することが出来ず,右手は包丁が滑ってしまい,本人からも「指が勝手に動くから怖い」「指を切りそうになる」との発言があった.安全面を考慮して片手のみで行える調理方法を進言したが,本人の受け入れは悪かった.そこで,包丁の持ち手の位置が変えられるUDグリップ包丁と2個の指穴に第2,3指を入れて指先をガードする市販のプラスチック製フィンガーガードを用いて実施した.UDグリップ包丁は上肢にて力が入りやすいように持ち手の位置を真上に設置すると,安定性・操作性ともに問題なく使用できた.しかし,市販のフィンガーガードでは,①第2,3指は指穴への固定により保護されるが,第4指は固定されずに不随意運動で動くために危険である.②固定面が平坦で食材の固定性が悪い.③ガード面の面積が手指を保護するために十分な大きさではないという3つの問題点があがった.その対策として,①には第2指~第4指を固定するための3つの指穴を設置.②には安定した固定のため接地面を鋸歯状に変更.③にはガード面積が広くなるように工夫し,スプリント装具素材で作製した.作製したフィンガーガードでは左手指を切る危険性がなくなり,食材を安定して固定出来るようになった.1日30分の訓練を10日間行い,本人の不安感もない安全な動作が可能になった
【考察】
花岡は,上肢の感覚障害は家事遂行上,視覚代償や麻痺肢の使用場面の限定等により予測される負傷や事故防止を図る指導・教育が必要であることを述べている.本症例では視覚代償のみでは安全性が保てず,感覚障害ならびに不随意運動を両手に認めていた.そこで,調理動作の観察や本人の感想などにより問題点を明確にし,それを解決できるような自助具を自作することで料理動作を再獲得することができた.患者のニーズや障害像に合わせた自助具を検討し自作することで,安心した生活が送れる援助になり得ることが示唆された.
(第52回 日本作業療法学会2018 口述発表)
 
麻痺側からの袖通しよりも健側からの袖通しが有効だった着衣障害の一例
2018-09-22
麻痺側からの袖通しよりも病前の習慣である健側からの袖通しが有効だった右頭頂葉皮質下出血による着衣障害の一例
増田馨織(OT),新藤和廣(OT),松本千歩(PT),三好安(Dr)
 
【要旨】
着衣障害は,運動・感覚障害,視覚障害,視覚認知や空間認知,動作や行為の高次機能障害など様々な要因によって生じる.片麻痺を伴う着衣障害では,頭通しと袖通しのどちらを先に行うかは各症例によって検討されるものの,袖通しの順序については健側よりも患側から先に行う指導が一般的である.
今回,従来の患側からの袖通しを反復練習するも動作の習得が困難であり,病前の習慣的な着衣方法であった健側からの袖通しにより動作が自立できた右頭頂葉皮質下出血による着衣障害の症例を経験した.
本症例のごとく,左片麻痺が軽度であり左半側空間失認が着衣障害の主因と考えられる場合には,病前の習慣的な着衣動作を優先したアプローチ方法が有効なこともある可能性が示唆された.
(九州理学療法士・作業療法士合同学会2017でポスター発表)
 
顔面麻痺に対するスプリントの治療効果
2018-09-22
顔面麻痺に対するスプリントの治療効果
 塩川 剛弘・山近 妃呂乃・坪浦 ななえ・下田 和代・三好 正堂
 
顔面麻痺には中枢性麻痺と末梢性麻痺の2つがあり,両者とも一般に回復は良好であるが,中には重度麻痺を残すこともある.脳卒中における顔面麻痺は中枢性麻痺であるが,多くは保存的に治療され,また訓練法の記載は比較的少ない.しかし詳しく聞いてみると,容貌が醜くなるという問題だけでなく「口角から食べ物がこぼれる」,「よだれが出る」,「しゃべりにくい」などを訴えることが少なくない.
脳卒中による顔面麻痺の3症例(急性例2例,慢性例1例)に顔面スプリントを作製し,睡眠以外の時間は食事中も装着した。その結果,食事しやすく,話しやすくなる効果が得られた.慢性例の1例は発病後17ヶ月以上経過していたにもかかわらず,麻痺の回復も得られた.
(総合リハビリテーション 第46巻 第3号 2018年)
 
回復期リハビリテーション病棟における脳卒中の在院日数を45日に短縮
2018-02-05
 
「リハビリテーション・プログラムの工夫により、回復期リハビリテーション病棟における脳卒中の在院日数を45日に短縮」
 
 高齢化社会を迎え、リハビリテーション(以下、リハビリ)を要する患者が急増している。できるだけ多くの患者を迅速に受け入れるためには、回復期リハビリ病棟の在院日数を短縮する必要があり、そのためにはリハビリ・プログラムも工夫しなければならない。
 入院時の説明で、脳卒中のリハビリは2ヶ月で完了できること、その後はできるだけ自宅へ退院し、次の患者にベッドを譲ってほしいと説明した。プログラム:理学療法では麻痺肢の治療ではなく、非麻痺肢の強化に主眼を置き、1日400〜600回の起立-着席運動を行った。これは集団訓練を行うと容易であった。作業療法では、麻痺手の機能回復とともに、移乗、車いす駆動などで下肢の強化に力点を置いた。ADLの回復は下肢強化で自動的に可能になる。言語摂食療法では言語訓練に限定し、嚥下訓練は行わなかった。エビデンスの得られた嚥下訓練はほとんどないためである。時間にして1日4時間理学療法/作業療法の訓練室に留まるようにした。
 われわれの回復期病棟で治療した脳卒中実験例(254例)と、全国調査(9,041例)との成績を比較した。入院時FIMには差がなかったが、退院路FIMは実験例94.6点、全国調査88.3点、平均在院日数は実験例45.0日、全国調査81.3日、自宅退院率は実験例80.3%、全国調査66.3%で、それぞれ差がみられた。
 非麻痺側下肢の筋力を強化し、運動量を増やすプログラムにより、在院日数を短縮することができた。
(日本医療マネジメント学会雑誌 V0l.18,No3,2017)
 
トイレで排泄させる為に有用だった簡易型リフト『ささえ手』
2017-10-20
 
デンマーク高齢者ケア 現地視察研修
2017-07-10
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